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交合

 「お願い。ほどいてよ。お願いだから。ねえ。ねえ」
 寝台の上にX形に縛りつけてから犯すと、きまって由佳はうわごとのように解いてほしいてほしいと哀願するのだが、縛り、縛られていることがお互いの情欲を煽っていることも確かだった。
 由佳は私の下で息を荒げ、身悶えし、やがて極まってくると、イヤイヤをするように首を振りながら、尚更はしたない声をあげた。
 手足で私にしがみつけない分、由佳の粘膜は何か執念さえ感じさせるような具合で私の性器にからみついてきて、私をえもいわれぬ心地にさせた。その精妙な感触に、私はたまらず由佳の汗ばんだ裸体を強く抱き、彼女の髪に顔を埋めてほんの少し寿命を延ばそうとした。
 馥郁たる香りが私の鼻腔を満たした。私が鼻先を由佳の頭皮に擦りつけるようにしてその芳香を貪っていると、由佳は首を捻って私の唇を求めた。唇を会わせると、舌が侵入してきて、私の口の中でつむじ風のように跳ね回った。吐息は湿った匂いがして、唾液は甘かった。
 かすかな腋臭の匂いがした。
 私は追いすがる由佳の唇を振り切り、耳から首筋へ舌と唇で這い進みながら、腋の下の窪みを探り当てた。甘ったるくて香ばしい匂いが確かにそこから発せられていた。私は汗ばんだ由佳の腋に鼻を押しつぶすようにすり寄せて、その匂いを味わおうとした。
 由佳は絶頂の前後だけ、腋臭の匂いを放つのだった。
 私との交合が由佳の体内のどこかにある秘密のスイッチを押すのだろうか。
 「ほら、匂いだした」
 意地悪く指摘してやると、由佳は恥ずかしさに悲鳴をあげて乱れた。もうすぐ達しそうだ。
 由佳の体臭を嗅ぎながら、私は子供の頃に遊んだ覚えのある、擦ると香りを放つ花の写真を連想した。
 匂いに導かれるように、由佳と私は絶頂に達した。二度、三度と、由佳の体内に精を吐き出しながら、私は由佳の匂いがなお一層濃密に漂いだすのを感じた。
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